やったーブレカナでVOCALOID実装できたよー\(^o^)/


かつて、一台のクレアータを作り上げて世を去った、一人のデクストラがいた。
今ではその名を表す資料も失われ、彼の名はただ"人形師"としてのみ伝わる。


この二つ名が意味するところを知るためには、当時の錬金術の隆盛について説明せねばなるまい。
現在も残る練達の技として、自動攻城機械や錬金馬といった作品が有名だが、分けても衆目を集めるのは、人と見紛うばかりの精巧さで創られた人形――所謂"クレアータ"の伝説であろう。
今でこそその存在を知る者も少ないが、書物によれば昔、"限りなく人に近い"クレアータが追い求められた時代があったという。
外見、所作、言葉、そして何より心を人形に宿らせるべく、幾多の匠が持てる技の全てを振るうそんな時代に、ただ一人、外見にも所作にも頓着しない人形を求めたデクストラが居た。
人々はそんな彼を嘲った。"人形師"とはつまり、人を創ることができない彼への蔑称であった。


彼が人形に宿らせようとしたのは、ただ「歌」だけであった。
世界中を旅し、文献を紐解き、古今東西のあらゆる歌を蒐集した彼は、その全てを自分の人形に宿らせることを生涯の目的とした。
彼の作品は、外見も、所作も、一目でそれとわかる「唯の人形」であったが、川の乙女に勝るとも劣らない歌声を響かせることができたという。
しかし"人形師"は、幾度も作品を廃棄し、より精妙な歌声を求めた。
弟子も助手もつけずに製作に打ち込む理由を伝える資料は無く、彼が何を求め、何を手にしたのかを知ることは難しい。
彼の作品が現存していれば、あるいはその一端を知ることはできるだろうか。


"人形師"は最後の人形を作り上げた後、牧童の戯れ歌にしばし聞き入り、その足で崖から身を投げたという。
遺作の行方は残されていない。


これより後は、噂話でしかない。
"人形師"の最後の作品は、製作者が居なくなった後、世界を放浪しながら歌を歌い続けているという。
曰く、道に迷った旅人が、「ただ真っ直ぐに歩みたまえ」と歌う声に導かれて森を抜けた――
曰く、研究に詰まった学者が、「虫と鳥の寓話」のメロディを聞いて、生涯の研究を為し得た――
事実だとすれば、話すことも踊ることもできない人形は、ただ歌うためだけに与えられた心で、何を思うのだろうか。


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